ラフランスのシンデレラ物語5


じつは、このラフランス、もともとバートレットなど他の洋梨の授粉樹として栽培されていたのですが、前述の通り、無骨な外観の上、そのまま食べても堅いばかりで誰もあえて食用にするひとはいなかったのです。しかし、その固い実を一定期間常温のまま放置しておくとやがて果肉がやわらかくなり、糖度も増し、さらに気品ある芳香を放つようになることは以前から知られていました。しかし、その一方でこのラフランス、日にちがたつと今度は一気に追熟が進んでしまい、食べる間もなく腐ってしまうという厄介なしろものでもあったのです。

ラフランスのシンデレラ物語

昭和40年代、山形県に一風変わった名前をもつ果物がありました。その名は、「みだぐなし」。「みだぐなし」とは、地元で不美人を意味する言葉なのですが、たしかにそれは見た目にもごつごつした、しかも食べてもかたいばかりで味気もなにもない魅力にとぼしい果物でした。

農家の人でさえ「ああ、みだぐなしね。ありゃだめだ。作ったって売れやしねえ」とさじを投げる始末で、地元ではだれも見向きもしないどころか、むしろみなしてその名前をはやし立てては馬鹿にするようなありさまでした。

ところが、何年かたつとその山形県に突然、彗星のごとくあたらしい果物が登場しました。「ラフランス」という、いかにも都会の消費者に受けそうなお洒落な横文字の名前をもつこの魅力的な果物の登場に、地元の農家はがぜん色めきだちました。「これは売れるぞ!」そう考えた多くの農家がラフランスの試験栽培に挑戦しはじめました。 もちろん、それまでみだぐなしを馬鹿にしていた地元の農家も流れに乗り遅れまいとこぞって栽培をはじめました。

ところが、このラフランス、じつはその正体はなんと…。 かつてみんなからバカにされ続けてきた あの不細工でまずい果物、「みだぐなし」だったのです。

…え、どうして?

 じつは、このラフランス、もともとバートレットなど他の洋梨の授粉樹として栽培されていたのですが、前述の通り、無骨な外観の上、そのまま食べても堅いばかりで誰もあえて食用にするひとはいなかったのです。しかし、その固い実を一定期間常温のまま放置しておくとやがて果肉がやわらかくなり、糖度も増し、さらに気品ある芳香を放つようになることは以前から知られていました。しかし、その一方でこのラフランス、日にちがたつと今度は一気に追熟が進んでしまい、食べる間もなく腐ってしまうという厄介なしろものでもあったのです。

そこで、農業試験場などが研究に着手、やがて追熟のための最適な日数と温度を割り出す事に成功しました。ここに「みだぐなし」の商品化への道が開けたというわけです。もちろん、商品化にあたっては、「みだぐなし」という不名誉な名称は捨てられ、「ラフランス」という新たな称号がつけられました。かくて、みんなから馬鹿にされてきたかわいそうな果物はやがて誰からも愛される果物の女王へと、まるでシンデレラのように生まれ変わったのでした。めでたし、めでたし!